“トピックス”

第56回JA全国青年大会を開催ー千石興太郎記念賞を受賞した JAながさき西海させぼ地区青年部の発表

「私たちのターニングポイント」 ~父とのつながり。人とのつながり~

【JAながさき西海させぼ地区青年部】浦 純二

「青年部って何のためにあるとですか?」

たまにある、そしていつも中身のない定例会。部員の何気ない問いかけに、誰も答えることが出来なかった。

そうこれは、今から3年前の私たちの姿。

今こうして思えば、考えられないほど、みんな活動に対して無関心でした。名ばかりの青年部。人数あわせの部員。ただ昔から続けられてきた活動だけを仕方なくこなす執行部。当時の私たち青年部は、JAにとってもお飾りの組織。これでは、青年部員として何をしていいのか?何を目指すべきなのか?何もしていない青年部では答えが出るはずもありません。私たちは、自分の将来に、地元の農業の行く末に不安を抱いていました。

そして、私たちは話し合いました。何度も何度も話し合いました。私たち青年部が目指す先を。私たち青年部の存在価値と組織活動の意義について・・・。

「いっちょ、新しか活動ばしてみるか?」。

この年の前年に「食育基本法」が制定され、JA全青協においては「食農教育活動」を全国展開することとなり、県下青年部においてもどこよりもいち早く取り組みに着手するという話を受け、私たちは思い切って「食農教育」を新たな活動と位置づけました。重い腰を上げたにもかかわらず、私たちは何から始め、どんな取り組みをすれば良いのか解らず、「日本農業新聞」や「地上」などをかき集めては、他の青年部組織や団体の活動事例を参考に何とか計画を立て、JAに出向きました。

「私たちが、『農』と『地域』の虹の架け橋になります。」

その決意と意気込みに、JAは、協力とチャンスを与えてくれました。

この時、私たちは「食農教育活動」がキッカケで、青年部の存在価値を知るとは思いもせず、それを知るのは3年後のことです。

食農教育活動1年目。

私たちの南部地区では、地元の佐世保市立広田小学校の5年生160名を対象に、『ひろっ子ファーム』と名付けた活動が始まりました。全てが手探りの中、始めた活動でしたが、体験を通じて喜ぶ子ども達の姿を見て、私たちは満足感に溢れていました。活動最終日に、青年部役員と先生方で反省会を開いたところ、「授業では学ぶことができない体験ができて、とても良かったです」「今後は、作物を育てる苦労や、楽しさを伝えながら、もっと農業へ関心を高めるための活動をさせたいですねぇ」と、その日は、夜遅くまでお酒を片手に、食農教育活動について語り明かしました。

翌日、全部員を集めて、2年目の活動計画について話し合い。「2年目は栽培だけに留まらず、自分たちが作った農産物で地元の伝統料理などを作ってもらうため、JA女性部の力を借りよう」「組織は違うが地元農業を支える仲間だ、市の青年農業者組織にも声をかけよう。」「保護者の方も参加できるような活動にしていこう。」「農作業のほかにも、農業に興味を持つような活動を取り入れよう」など、部員が積極的に活動へ取り組もうとする意識の変化と一年目の活動をやり遂げた自信が現れ、2日続けてお酒を片手に、「食農教育活動」や「青年部」について、とことん語り明かしました。

後日、私たちは、2年目の活動を取り組む前に、JA女性部と青年農業者との話し合いの場を持ち、女性部員さんからは、「あんたたちは、息子みたいなもんやし、小学生は孫みたいなもん。調理とかで良ければ、協力するたい。」と嬉しい言葉をもらえ、青年農業者は、私たちの意気込みが伝わってくれたのか、二つ返事で協力してくれることとなりました。

そして、3組織共同で「食農教育活動」を専門的に取り組むための組織「させぼ南部地区食農教育活動実行委員会」を起ち上げました。

2年目の活動スケジュールを決める会議の時に、「JA全中主催の『壁新聞コンクール』へ出展しよう」と、ある部員からの提案があり、「子ども達が積極的に活動へ取り組むための後押しになると思う。」「審査が通って東京に行けたらきっと喜ぶよ。」「農業を深く理解してもらえるきっかけになる。」と盛り上がり、2年目の活動の目玉としました。1年目の活動で、自信をつけた私達は、活動内容の幅を拡げ、意気揚々と2年目の活動に取り組んでいったのです。

この年は子ども達に実際に道具を使った作業を行わせたり草取りなどの地道な作業も行わせ、一生懸命に作物を育てた子供達は、「自分たちで作ったぞぉー」と実感してくれました。サツマイモの収穫を授業参観日にあわせて行ない保護者の方にも活動に参加してもらうことで、子ども達が楽しく作業する姿を見て、私たちの想いを理解し感じ取ってもらえたのではないかと思いました。

農作業も終え、早速、壁新聞づくりの始まりです

体験して身につけた知識や図書室などで調べた知識を基に、しめ切りギリギリまで掛かって全部で14枚の壁新聞を作り、コンクールへ応募しました。

そして入選発表当日。全国で206の応募の中から49グループが選ばれ、なんと、『ひろっ子ファーム』だけで、3つのグループが入選するという素晴らしい快挙。長崎県でここだけです。いわゆる長崎県代表です。私達や先生、そして子ども達も大喜びし、コンクールに向けて練習を重ね、クラス全員で代表者を送り出しました。

発表会当日、先生方と一緒に、私たち青年部も子ども達を引率し、会場である東京大手町のJAビルに向かいました。会場では、緊張の面持ちで発表時間を待つ子ども達も、開会式後に発表が始まると、活動の取り組みや自分たちの想いを必死に伝え、準備してきたPR用の広告もたくさん配り、「ひろっ子ファーム」を全国の仲間に広めました。発表が終わると、全青協の理事たちが被り物を着てクイズ大会を開くなど、子ども達との交流を深めていました。

残念なことに「ひろっ子ファーム」の中からは、賞に選ばれるものはありませんでしたが、子ども達は、やり遂げた気持ちを胸に会場を後にしました。その時の子ども達の姿を見て私達は、成長を感じとりました。

2年目の活動最終日に行われた感謝祭の場において、保護者の方からお礼の言葉を頂きました。

-保護者からのお礼の言葉-

「今年から農業体験ができる」と喜んで、娘が学校から帰ってきました。

昨年、兄が農業体験をさせて頂いて、とても楽しそうに話す姿が娘にとってうらやましく見えたんだと思います。娘は、学校で農作業をしてくる度に、農家の皆さんに「上手だね」って褒められたことを喜んでいました。今では、スーパーに行けば、お兄さん達が育てた野菜を探しに、生鮮売り場に行くようになり、皆さんのファンになったと言っています。

嫌いだった野菜も、食べてくれるようになりました。貴重な体験をさせて頂いて本当にありがとうございます。

私たちは、目から涙が溢れ、感動を通り越し、雷のような衝撃が体を走りました。

「これだ」「私たち青年部の存在価値とは、私たちのファンを作って行くことなんだ。」そして、3年目となる今年、私達のファンをもっと増やそうと食農教育活動の場を拡げることにしました。

JAも理事会において「JAながさき西海食農教育活動実践計画」を決議し、私たち青年部を中心に全面的にサポート。これは、JAが私たち青年部の取り組みを評価しJAに青年部の存在が必要だと形に現した結果です。JAが、「『農』と『地域』の虹の架け橋となるJA」と目標を掲げるに至ったことが、まさに青年部がJAを動かした瞬間でもありました。

また、広田小学校と連携して取り組んだ活動が、佐世保市の食育学習のモデル校として教育委員会から指定を受け、学校関係者側にも大きな影響を与えました。今では、市内の小学校を中心に農業体験と地元食材を使った料理を食べながらの触れ合いや、古き良き日本の文化を体感してもらうために餅つきや味噌づくりをしたりゲストティチャーとしても教壇に立ち、農業へ関心を持ってもらうための授業を行っています。

活動の場は、地元小学校に留まらず、小学校の先生に地元農業を知ってもらおうと「農業体験バスツアー」を開き、また県内に留まらず、風土の違いによる農業環境を知ってもらおうと、北海道と地元の子どもを対象に「ファームステイ交流会」を行い、さらには国内に留まらず、日本の食文化を学んでもらおうと米軍基地内の子どもたちと「米づくり」を行ったりアメリカ海軍の皆さんと農業を通じて交流会を開いたり青年部員フル稼働で、たくさんの活動を繰り広げています。そして、畑を飛び出した私たちは、九州最大級のテーマパークハウステンボスで開かれるイベントに、子ども達が栽培した農作物を持ち込んで参加するなど、地元企業とも一緒に活動を行っています。

もちろん、JA事業も忘れてはいません。

JA農業まつりの場においても、来場者に対して乳搾り体験やバター作り体験を行うなど、集客率の増加を図るとともに、祭りを盛り上げています。

そして今年の10月、JAと共に活動してきた『食農教育活動』が、JAの組織活性化につながった優良な事例として評価され、JA全国大会において事例発表を行うなど、全国に『JAながさき西海』の名を広めました。

また、これらの様々な活動は、行政をも動かしました。佐世保市の農産係では、事業計画・予算編成の打ち合わせの場において、青年部も参加し、地域一帯となった取り組みへと歩み始めています。魅力あるものには、自然と人が集まるもの。今では、魅力ある青年部組織として、部員も徐々に増えてきています。特に、和牛を肥育する青年部員は、平成24年に、佐世保市をメイン会場として開かれる第10回全国和牛能力共進会に向けて、鼻息荒く頑張っています。

そして、新聞、テレビなどのメディアを通じて活動のPRと理解促進をはかっています。

家族からのサポートもあり、周りの組合員さんからも「最近、頑張ってるみたいやねぇ」と声をかけられることが増えてきました。

そして今、私たちのファンを不動のものとする為の一つとして、「佐世保っ子農業チャンピオン」と銘うった「佐世保市版壁新聞発表大会」を計画しています。現在、10校までに膨れ上がった食農教育活動に取り組む学校を対象に参加を呼びかけ、今年の活動の目玉としています。

そしてこの先、農業の枠を超え、商業、工業、漁業と連携した「農商工漁連携」での取り組みを目指し、地域に根付いた活動、地域を巻き込こんだ活動、地域の発展につながる活動を展開していきたいと考えています。

「いっちょ、新しか活動ばしてみるか?」から動き出した私たちは、新たな活動へ、チャレンジしようする意欲。新たな活動に、取り組めた行動力。活動を、発展させようとする意識。仲間とともに、活動する団結力。この3年間で歩んできた道が、青年部の存在価値を見出す『ターニングポイント』となり、組織活動の意義を知る『道しるべ』となりました。

もう、「青年部って何のためにあるんですか?」とは言わせません。

私たちの存在は、JAを動かし、行政を動かし、学校を動かし、地域を動かす力を持っています。それが、私たち青年部の存在価値なのです。さあ、全国の盟友の皆さん、今度は、日本の国を動かす為に「いっちょ新しか活動ばしてみようで!」

ご清聴ありがとうございます。